故人の免許証
令和元年末時点の統計によると運転免許保有者数は約80%を超えています。取得する理由については人によって様々ですが、個人の身分証明書としても代表的なものですから人によっては身分証明書として活用する目的でも使う機会が多いかもしれません。このように免許証は個人を証明するものとしても重要な役割を果たしますから、悪用されるリスクも高いといえるのです。そういったリスクを回避する為にも、くなった方が免許証を取得していた場合には所持者に代わって遺族の方が返納手続きをすると良いでしょう。免許証の所持者が死亡した際は効力を失い無効となる為に返還することになりますが、義務ではありません。運転免許証には期間が定められている為、更新をしなければそのまま失効とみなされます。免許証の有効期間は三年もしくは五年で、こちらの期間は所持者の交通違反の有無や年齢などの状況により異なりますが、更新をせずに有効期間を過ぎた免許証は失効するので免許証を所持していても運転はできなくなります。自然に失効する上に義務がないのであればわざわざ返還する必要はないのでは?と考える人もいらっしゃるかと思いますが、返還をしていないと偽造されて悪用されるなどといったリスクは避けられません。有効期限が切れている免許証であっても返還の手続きはしておいたほうが安心です。万が一、返還せずにご自身で処分をするという選択を取る場合であっても、顔写真が付いていて住所や生年月日の個人情報が記載されているという特徴がありますから間違ってもそのまま捨ててしまうという事は絶対にないようにしましょう。
また、免許証を取得していると携帯している方が殆どですから、形見として残したいから返納したくないという方も多いです。返納するからといって、免許証そのものを返さなければならないわけではありませんから免許証自体は返納しても手元に残せます。希望すればパンチで穴を開けた状態にはなりますが返してもらえますので、形見や思い出として取っておけますので残しておきたい方は返納の手続きの際に免許証を残したい旨を伝えましょう。
免許証を返納する方法は最寄りの警察署もしくは運転免許センターへ出向いて行うことになります。原則として手続きは遺族の方が行う事とされていますので、万が一に遺族の方以外の代理人の方が手続きを行うといった場合には必要書類などが変わることがあるので事前に確認をしておく必要があります。免許証を返納する時期については明確に定められていませんので、返納をしなかったとしても罰則等はありません。身内が死亡した場合には非常に多くの手続きがありますので、期限や義務がないものについてはつい後回しにしてしまったりそのままにしてしまったりされがちですが、悪用されるリスクを回避する為にも役所の手続きが終わった時点で可能な限り早めに返納の手続きを行うことをおすすめ致します。
続いて方法についてですが、死亡した人の手続きのひとつとして役所に死亡届を提出し除籍などを行ってもらいますが、この手続きは運転免許証を管轄する国家公安委員会や警察とは情報を共有していませんので運転免許証の返納手続きは別途行わなくてはいけません。ですから最寄りの警察署運転免許窓口もしくは運転免許センターへ出向いて「運転免許証返納届」という書類に必要事項を記載し所定の必要書類と併せて提出を行います。運転免許証の返納に必要な書類は「死亡した方の運転免許証」「死亡診断書もしくは戸籍謄本(除籍後)の写し」「届け出をする方の身分証明が可能なもの」「運転免許証返納届」「届出人の印鑑(認印でも可能)」の五点になります。死亡診断書の写しは運転免許証の返納手続き以外にも使用する機会が多いので予め何枚か余分に用意しておくと良いです。戸籍謄本の写しについては、死亡届を提出し手続きが終了した時点のものが必要になりますので死亡届を出した際に戸籍謄本が必要になる旨を役所の窓口で伝えておくとと手続きがよりスムーズです。
運転免許証の返納の他にも、故人が車を保有していた場合には注意が必要になります。車は相続財産と見なされる為、売却・譲渡・廃車どの選択肢をとった場合でも手続きが必要となります。故人が車を所有していた場合、まず必要となる手続きは名義変更です。売却・譲渡・廃車売却・譲渡・廃車どの選択肢をとった場合でも所有者もしくは使用者が故人のままでは手続きが行えない為です。名義変更の手続きは、軽自動車の場合は「軽自動車検査協会」普通車の場合は「運輸支局」で行うことになります。また、名義変更を行わないでいると、時期によっては故人に納税の納付書が届いてしまうことになりますから、相続の協議を行う際に所有していた車を加えることを忘れないようにする必要があります。それでは軽自動車の場合と普通車の場合の名義変更に必要な書類について順番にお伝え致します。まずは軽自動車の場合ですが「自動車検査証」「新使用者の印鑑」「新所有者の印鑑」「新使用者の住所を証明できる書面」(発行されてから3ヶ月以内の住民票・印鑑証明書)「死亡の事実が記載されている故人の戸籍謄本」「自動車検査証記入申請書」「軽自動車税申告書・自動車取得税申告書」の七点になります。故人が車の使用者で所有者がディーラーやローン会社になっている場合には手続きに必要な書類が異なるので、所有者に連絡し必要な手続きを行いましょう。続いて普通車の場合ですが、手続きを行う人が誰かによって書類の種類が異なります。まずは新所有者となる相続人が手続きを行う場合ですが「自動車検査証」「死亡の事実が確認できる戸籍謄本もしくは戸籍の全部事項証明書」「相続人全員が確認できるもの」「発行から40日以内の車庫証明書」「相続人全員の実印押印された遺産分割協議書」「発行から3ヶ月以内の代表相続人の印鑑証明書」「代表相続人の実印(代理人の手続きの場合は代表相続人の実印が押印された委任状)」となり、相続人全員が手続きを行う場合は「自動車検査証」「死亡の事実が確認できる戸籍謄本もしくは戸籍の全部事項証明書」「相続人全員が証明できる書面」「発行から40日以内の車庫証明書」「発行から3ヶ月以内の相続人全員の印鑑証明書」「実印が押印されている新所有者以外の相続人全員の譲渡証明書」「相続人全員の実印(代理人の手続きの場合は相続人全員の実印が押印された委任状)」となります。
また、車の名義変更を行う際には自動車保険・任意保険の名義変更も必要となります。名義変更を行えば自賠責保険の名義は変更ができるのですが任意保険の場合は手続きが必要となるので注意が必要です。加入していた保険会社へ連絡し、契約者を変更する手続きを依頼しましょう。
相続人ではない第三者に譲渡する場合には相続とはまた別の手続きが必要になります。その際に所有者が異なる場合は、譲渡の前に所有者に連絡し必要書類を運輸支局に提出することが必要というのが前提となってきます。第三者に譲渡する場合の必要書類については、相続人と新しい所有者それぞれがこれからお伝えする書類を準備しなくてはいけません。まずは相続人が準備する書類は「自動車検査証」「死亡の事実が確認できる戸籍謄本もしくは戸籍の全部事項証明書」「相続人全員分の譲渡証明書」「相続人全員分の印鑑証明書」「相続人全員の実印(代理人の手続きの場合は相続人全員の実印が押印された委任状)」となり、新所有者が準備する書類については「発行から3ヶ月以内の印鑑証明書」「所有者の実印(代理人の手続きの場合は所有者の実印が押印された委任状)」「発行から40日以内の車庫証明書(所有者と使用者が異なる場合)」「※使用者の住民票(所有者と使用者が異なる場合)」「※委任状(所有者と使用者が異なる場合)」となります。
また、名義変更の手続きには移転登録手数料・自動車保管場所証明書ナンバープレート・自動車取得税の費用が掛かり、名義変更の場合は移転登録手数料以外は新所有者が負担することになります。
故人の確定申告
準確定申告とは、亡くなった方(被相続人)の相続人がその年の所得や納税を負担する手続きのことです。通常の確定申告では本人が前年度の所得状況を翌年の基本的には毎年2月16日~3月15日に申告します。(土曜・日曜・祝日等の場合は翌日に繰り越しとなります。)しかし申告が必要な方が亡くなった場合は相続人がこの手続きをしなければなりません。準確定申告の対象となるのは1月1日~亡くなった日までの被相続人の所得となり、死亡後4か月以内に申告する必要があります。ただし、被相続人が3月15日以前に亡くなりその前年の確定申告が行われていない場合には前年分の確定申告も準確定申告として手続きが必要となります。準確定申告は亡くなった方が確定申告をする必要があった場合にのみ必要になりますので、亡くなった方すべてに準確定申告が必要という訳ではありません。具体的な対象ケース・還付を受けられるケースは以下の通りです。
◆準確定申告が必要な場合
・給与収入が2,000万円を超えた場合
・給与所得・退職取得が20万円を超えた場合
・二か所以上から給与を取得していた場合
・公的年金等による収入が400万円を超えた場合
・公的年金による雑所得以外の取得金額が20万円を超えた場合
・生命保険等の満期金や一時金を受け取っていた場合
・土地や建物を売却した場合
・事業所得や不動産所得がある場合
※以上の場合は確定申告と同様です。
◆準確定申告により還付を受けられる場合
・高額の医療費用を支払っていた場合
・各種控除を受ける場合
・給与、年金による収入のみで源泉徴収が行われている場合
また、通常ですと確定申告は所得者本人が行うものですが、準確定申告は相続人が代理で確定申告を提出するとお伝え致しましたが、相続人が二人以上の場合には全ての相続人が連署で提出する必要があります。もしくは、他の相続人の氏名を付記し事前に了承を得ておけば単独でも準確定申告手続きを進めることも可能です。
準確定申告の手順については通常の確定申告と同様の書式で行いますが、申告者の氏名欄については被相続人の氏名の他に「相続人代表者名」を記名し用紙の表題の確定申告の先頭部に「準」の文字を入れる必要があります。確定申告書には二種類あり、給与所得や年金など雑所得・配当所得などがある方向けの申告書A、事業所得や不動産所得などがある方向けの申告書Bがありますので目的に応じたものを使用しましょう。準確定申告に必要な書類は確定申告と同様で、源泉徴収票や保険料等の支払証明書などを事前に用意します。支払証明書については死亡した日までの支払い分が控除の対象となります。年金受給者の場合であれば死亡届を提出した時点で年金の源泉徴収票が送られ、事業所得がある場合であれば申告の内容に応じて青色申告決算書や収支内訳書などの提出が必要となります。相続人が複数いて準確定申告を行う場合には申告書と共に確定申告書付表(兼相続人の代表者指定届出書)の提出が必要となります。ここには、相続人の署名捺印と相続分の割合を記入しなければなりません。この割合を元に、税金がある場合には納めたり還付が行われます。また、平成28年分から準確定申告書を連署で提出する場合は続人全員の個人番号(マイナンバー)を記入し本人確認書類を提出する必要があります。確定申告書の記載例等に関しては国税庁のホームページで確認することができますので、そちらを併せて参考にしてください。
確定申告と準確定申告の内容はほぼ同じですが、相続人が手続きを行う上で通常の確定申告とは異なる注意点がありますのでそちらも詳しくお伝え致します。まずは提出先の税務署についての注意点です。準確定申告は相続人の住所地の税務署ではなく「亡くなった方の住所地」の管轄税務署にe-Taxではなく書類を提出する必要があります。納税に関する相談に関しては全国どの税務署でも可能なのですが、申告書の提出先はあくまで「被相続人の住所地を管轄する税務署」となりますので注意が必要です。被相続人の住所地を管轄する税務署に行くことが難しい場合には郵送で提出することができますがe-Taxでの申告はできませんので注意してください。準確定申告書を郵送する場合には、控えの返送が必要になりますから返信用の切手を貼った返信用封筒を同封しましょう。相続税の申告を行う際に必要になります。申告受付日は郵便消印の日付になります。管轄の税務署の調べ方は、国税庁のホームページの「組織(国税局・税務署等)」から調べることが可能で、都道府県名から各税務署の連絡先および管轄地域を確認できます。
また、勤務先からの給与や賞与は申告の対象となり、亡くなった日以前に支給されていた給料は故人の給与所得として取り扱われますが、亡くなった日以降に給与が支給された給料は故人の給与所得には含まれません。給与の締め日ではなく支給日で判断され、同様に生命保険料や地震保険料などは死亡日時点までの支払いが対象となります。また、被相続人が生前に支払った医療費も控除の対象になり、被相続人の死後に支払った医療費は準確定申告の対象にはなりませんが、被相続人と相続人の生計が同じであれば相続人の確定申告時に医療費に含めることが可能です。なお、被相続人の所得金額48万円以下であれば扶養控除又は配偶者控除を受けることも可能です。
準確定申告は確定申告が必要な被相続人の死亡を知った時から4か月以内に相続人が行うとお伝え致しましたが、納税の期限についても準確定申告の提出期限と同じなので注意が必要です。4ヶ月を過ぎると加算税が発生してしまいます。また準確定申告は被相続人の相続人全員が行う必要がある為、確定申告付表を用いて相続人全員が連署しなければなりません。連署を行わずに各相続人が個別で申告を行うことも可能ですが、その場合には他の相続人に申告内容を通知しなければなりません。詳しくは国税庁のホームページで確認することができますので、そちらも併せて参考にしてください。