お通夜と半通夜について
近年では時代や生活形式に合わせ葬儀の形式は多様化しつつあります。しかし、ほとんどの場合は通夜と葬式を執り行い故人を見送ります。一纏めに「通夜」と言っても葬儀や告別式には参列できない方の為の式という考え方の方も多いのではないでしょうか。
お通夜は、一般的に故人が亡くなった翌日に弔問客を迎えて行われるお葬式のひとつで、仏教の印象が強いですが仏教式はもちろんの事、式の名称は違えど神道式やキリスト教式での葬儀においても行われています。元々、夜通し灯りをつけお線香の灯を絶やさないようにした事がお通夜の由来です。お通夜は邪霊を防ぎご遺体を一晩中見守る目的があり、かつてはご遺体を安置した自宅でお通夜を行なう事が一般的でした。
近年では葬儀の会場などでお通夜を行う事が多く見受けられお通夜を執り行う場所だけではなく、地域が異なると通夜で行われる儀式や習慣も多様であるようです。近年多く見られる形式の一つである都心部でのお通夜では、葬儀と同様に弔問客に参列して貰い夕方頃(多くは午後六時頃開始)から短時間で終了する形式が中心とされています。先に述べた通り、現代のお通夜は、葬儀や告別式には参列できない方の為に行う式という考え方があり夕方頃などで仕事や学校が終わった後に出席して貰いやすい時間帯で行うのが一般的になってきています。その一方で、地域によってはお通夜のみが行われたり、火葬してからお通夜を行ったりする場合もあります。
お通夜は、具体的には葬儀や告別式の前日の夜に近しい親族や友人が集まりお坊さんに読経をあげて貰いご焼香を行います。基本的には午後六時頃から始まり一・二時間程の短時間で終わります。近年では友人や知人・仕事の関係者などの方はお通夜または告別式のいずれかに参列すれば良いとされていますので午前中に行われる告別式より夕方から始まるお通夜の方が都合がつきやすく、お通夜の持つ意味は以前より増しています。
通夜の言葉の由来は「夜通し」の意味からきているとされています。日本古来に行われていた葬儀形式である殯(もがり)と呼ばれる儀式が存在していて、故人が亡くなってからご遺体を火葬したり土葬したりせず長期にわたり安置したご遺体を見守る儀式の総称です。その間は死者の事を想い、その魂を慰めながら遺体の変化を見守ることで物理的に死者が亡くなったと認識する目的で行われていました。時代の流れと共に葬儀の簡略化や火葬の文化を取り入れた為に衰退しましたが現代に行われているお通夜や寝ずの番に関してはこの風習が変化して残った物ではないかとされています。
近年では馴染みがないですが、本来お通夜には仮通夜と本通夜があります。仮通夜とは故人が亡くなった当日の夜、一般的には近しい親族のみだけか近親者のみだけで行い自宅にご遺体を安置して夜通しお線香をお供えします。近しい人のみで執り行いますから礼服は着ず普段着ている洋服で十分とされ、故人を偲びながら一夜を明かします。しかし、あまりに華美な服装は避け、なるべく地味で落ち着いた服装を心掛けるようにするのがマナーです。レザーや毛皮・アニマル柄などの動物を連想させるような物は殺生の印象が強いという理由で厳禁ですので避けましょう。地域によっては仮通夜にお坊さんに来て貰い読経を依頼する場合もあります。
本通夜とは、近しい血縁関係以外の親族や友人知人・仕事の関係者など大勢の方が参列し、近年一般的にお通夜と呼ばれているものは本通夜を指しています。葬儀全般の簡素化が盛んになっている近年では仮通夜を省略し本通夜だけを行う場合がほとんどです。また時代の変化や生活形式の変化で忙しい方が増えた近年では、お通夜の方が告別式よりも時間帯が参列しやすいとしてお通夜だけの参列が増えています。
先にお通夜はご遺体を一晩中見守るのが本来の目的だと述べましたが、時代の流れと共にお葬式のスタイルは変化しています。参列者側の都合に合わせやすい夕方以降にお通夜は開始され仏教であれば僧侶による読経や焼香がされるのが一般的な形式で、参列者は焼香の後に遺族側がもてなす通夜振る舞いを受けそのまま帰宅になります。これが現代的に変化したお通夜であり、半通夜と呼ばれているものです。半通夜の事をお通夜という事も多くなってきています。半通夜が行われるようになった背景に都市部などで葬儀場や斎場に遺族の宿泊できる設備がもともと用意されていない場合が多かったり、夜通し線香やろうそくを灯し続ける行為が防火上の問題で出来ない事が増えてきているのです。このような背景から遺族が葬儀場に寝泊まりする必要が無く短時間で終了する半通夜が主流になりました。
半通夜において参列者は長居をせずに帰るのが基本的なマナーですので、参列が夜八時以降になってしまいそうな場合には、遺族は様々な対応に追われ参列者個々の要件に応じられる状況には無いので遺族へ直接連絡をせず葬儀場などへ相談すると良いでしょう。無理をして通夜式に参列せず葬儀や告別式へ参列する、都合が合わなければ弔電を送るなどの方法を取り、ご自身だけではなく遺族の方へ負担を増やさない方法をとるのもマナーのひとつです。
喪主と施主について
葬儀の際に喪主の他に施主という役割の名前を耳にする機会があるかと思います。耳にした事はあっても、喪主と施主の違いや役割について改めて考える機会はそう多くはないのではないでしょうか。
まず、喪主とは「喪に服する主」という意味で、お葬式を執り行う遺族の代表の事を指します。反対に、施主は「お布施をする主」という意味で、お葬式の費用を負担し運営全般を取り仕切る者を指します。喪主と施主が分けて考えられていたのは戦後の法改革で近年では一般的な葬儀の場合「喪主=施主」となる場合が多いので、施主の役割は喪主と同じと考えて問題ないでしょう。近年で喪主と施主が異なるのは、「喪主は故人の子供が勤め、お葬式の費用を故人の配偶者が負担する為施主になる」場合や「社葬で費用を会社が負担する為施主となる場合」などです。
喪主と施主が別々の場合以外では、施主ではなく喪主と呼ぶのが一般的ですので喪主という役割名を耳にする事の方が多いでしょう。ですが、喪主という呼び名は喪に服している期間だけで忌明けの法要からは喪主ではなくなり施主となる為、呼び名も変わります。
喪主も施主も葬儀において重要な役割を担っています。実際に葬儀を執り行う際に慌てる事がない様に、具体的な役割を知っておくと安心です。
喪主は葬儀に関する最終決定権を持ちますので、葬儀の形式や日時、費用に関することを関係者と相談して決定します。故人が亡くなる前に葬儀社を決めていない場合にご遺体の移動を急がなければならない場合に、病院や施設と提携している葬儀社に慌てて頼んでしまうと葬儀費用が割高になってしまうこともありますので注意が必要です。葬儀当日は、一定の時間内に受付から閉会までを滞りなく済ませなければなりませんし、実務には携わらずに葬儀社や手伝いの方に任せる事になりますので事前に役割分担や式の進行について確認し、葬儀社や手伝いをお願いする方と連携し、葬儀全体の監督として事前に決めた通りに進行出来ているかを確認する必要があります。逆に弔辞の依頼や弔電の選択など、遺族でなければ出来ない準備もありますのでしっかりと段取りをする事が必要です。
葬儀当日には様々な場面での挨拶が必要になり重要な役割になります。主な挨拶が必要な場面は、ご僧侶が到着した時・お布施を渡す時・会葬者に対して受付をする時・出棺時・精進落としの席での開式・閉式時です。参列してくれた方に感謝を伝える大切な場面となりますのでしっかりと準備をして臨むと良いでしょう。
施主と喪主を兼任している場合には、葬儀前後にお寺と連絡をとるのも大切な仕事になります。お付き合いのある菩提寺がある場合は故人が亡くなった後に連絡をとり、枕経から通夜・葬儀まで日程の調整をします。菩提寺がない場合には、葬儀日程に合わせてご僧侶に紹介していただくサービスを利用するか、葬儀社に相談すると良いでしょう。
依頼する葬儀社の選定は喪主が中心となって決定します。先に述べた通り、亡くなった病院や施設に紹介された葬儀社に依頼する事も可能ですが、その場合には葬儀費用が高額になってしまうことが多いので注意が必要です。
喪主と施主において、どの立場の人が務めるものなのかは厳密に決まっている訳ではなく血縁関係の深い順に決めていくのが一般的です。家族構成に合わせて決めても問題はありません。しかし、喪主を選ぶ際に最も影響力を持つのは故人の遺言で、遺言で喪主の指定がある場合にはそれ従い喪主を決める事にはなります。遺言に指定がない場合には、一般的な慣習では故人の配偶者が喪主になります。昔は家督を継ぐという意味から故人の後継者の方が喪主を務めていましたが、近年ではその意識が低下している事や家族構成などの変化から、故人の配偶者が喪主を務める事が多くなってきています。
配偶者が何らかの事情で喪主を務める事が困難な場合もあります。その際には血縁関係の深い方から優先されていきます。親族の続柄を血縁関係の深い順に並べると、長男>次男以降直系の男子>長女>長女以降直系の女子>故人の両親>故人の兄弟姉妹となります。また、配偶者や血縁者がいない場合には知人や友人・入所していた介護施設の代表者などが喪主を務める場合もあります。この場合には友人代表もしくは世話人代表と呼ぶのが一般的です。
喪主は必ずしも一人である必要はありません。法律で祭祀継承者は一人と定められていますが、喪主については特に決まりはなく喪主と施主を同じ人が務めても問題はありませんし、先に述べた喪主と施主が異なる場合には分けて立てると良いでしょう。葬儀費用を複数人で負担する場合などは喪主のみで施主を立てない場合もあります。